山村流宗家として毎年主催しております「舞扇会」が来月に迫ってきました。
二部制のうち、第一部は、東明節、地歌、長唄、義太夫、と音曲さまざまにお馴染みの曲をお楽しみ頂き、夕方からの第二部では「慣ちよっと七化(みなろうてちょっとななばけ)」と題し、江戸時代の演目を上方絵をはじめとする資料を基に復活上演する試みです。
芝居に通じた方は歌舞伎の成駒屋さんが元々上方の屋号であったことをご存じでしょう。
三世中村歌右衛門が江戸での興行に下り、再び大坂に上った時に、江戸の土産として変化舞踊「慣ちょっと七化」を上演し大好評を博しました。山村流の流祖・友五郎の振付であり、「傾城」「越後獅子」「座頭」「業平」「弁慶」「相模蜑」「朱鐘馗」の七役を当時は歌右衛門が一人で演じ分けた作品です。
以前から歌右衛門の七変化を描いた浮世絵を蒐集してきましたが、その縁もあって今回の上演に至りました。浮世絵については、昨年6月に学習院大学での「国際浮世絵学会」大会でも講演と実演をさせて頂いた次第ですが、浮世絵や資料を紐解きながら流儀の伝承を基に復元するという大きな作業となり、精魂を注いでおります。第二部のお開きに妹の光が「江戸土産」を舞います。(*第一部のキリでは僕もこの曲を舞います)歌右衛門は一人で舞分けたのですが、早変わりのスピードも現代のリモコン時代には無理がありますし、今回は七役を若一人、若女、若、若有子、若峯董と光、若祿之、侑、といった順番で次々に舞い分けます。変化に富み、珍しい演目ですので、きっとお楽しみ頂けると存じます。どうぞお運びください!
山村流 舞扇会「江戸土産 慣ちよつと七化」
平成22年5月9日(日)
大阪/国立文楽劇場・大劇場
第一部:午前11時開演(開場10時30分)
第二部:午後5時開演(開場4時30分)
*第二部は早稲田大学演劇博物館との共同研究として、開演前には、古井戸秀夫先生(東京大学文学部教授)にご解説賜る予定です。
ロビーにては「山村流ゆかりの資料展ー中村歌右衛門の変化舞踊」と題し、蒐集いたしました上方絵を展示させて頂きます。
舞台 | comment(1) |
上方風流の3回目が載りました。舞台を勤める際、直前や直後に解説をと依頼されることが多いのですが、僕はそれが本当に苦手です。僕は次に勤める舞台の為に楽屋にて静かに役作りをするというタイプではありませんがこう見えても意外と頭の中は舞台の事で一杯だったりします。
芸能を楽しむにはその作品を理解する云わば引きだしのようなものが不可欠であって、それを演者に求めるのは酷ではないかと思うのです。勉強しているのではなく楽しんで頂けるような土壌がだんだん少なくなってきているのも事実ですから、努力はしていかねばと思うのですが、これがジレンマとなっています。
上方 | comment(0) |
産経新聞に連載の吉坊との対談の2回目が載りました。
限りある紙面では伝えきれないようですが、
祖母(四世宗家)は、「大阪の土になる」と大仰に云っていたわけではありません。
平成19年、祖母の17回忌の追善舞踊会を開いたおり、プログラムに載せる為門人達に祖母の思い出を語ってもらいました。その折に一人の弟子がかつて吉村雄輝さんや武原はんさんが東京に行かれたことを挙げて祖母にどうして東京に行かなかったかと尋ねたら祖母は一言だけ「わては大阪の土になるねんで」と答えたそうです。
僕もそれまで知らなかった話ですが、祖母らしい話だなと心に沁みてそれ以来忘れられない言葉となりました。
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