4月4日土曜の「初心者のための上方伝統芸能ナイト」では、地唄『由縁の月』を舞わせていただきます。
地唄『由縁(ゆかり)の月』
憂しと見し 流れの昔なつかしや
可愛い男に逢坂の関よりつらい世のならい
思わぬ人にせきとめられて 今は野沢のひとつ水
すまぬ心のなかにもしばし すむはゆかりの月の影
しのびてうつす窓の内 広い世界に住みながら
狭う楽しむ真(まこと)と実(まこと) こんなえにしが唐にもあろか
花さく里の春ならば 雨もかおりて名や立たん
恋しい男とは別の男に身請けされた遊女が、真に心を寄せる男と逢うことが出来なくなったがその人の面影だけが自分の今の心を月の光のようにほのかに照らしてくれるのだと詠い
つらいと思っていた廓の世界を懐かしむ内容です。
近松門左衛門作「夕霧阿波鳴渡(ゆうぎりあわのなると)」吉田屋の段から書き換えられた歌舞伎『廓文章(くるわぶんしょう)』にこの曲が用いられていることから、大坂新町吉田屋の太夫・夕霧と馴染みになり勘当された藤屋伊左衛門が編み笠をかぶり紙子(紙で出来た粗末な着物)を着て、吉田屋へ訪ねてくる姿が振りにも取り入れられています。男と女の2通りの振りが伝わっていますが、男の方は伊左衛門の心持に寄り近く舞い、女は遊女であったり芸妓であったりその時々の扮装(ふう)で変わりますが大体が遊女という設定です。
地唄舞は、能・狂言・歌舞伎・文楽などの一部分を取ってその作品の匂いを曲に残し趣向として座敷にて楽しんだ芸能ですから、本来の作品を背景として知っていることでより深く味わえるようになっています。もともと文楽の作品であり、上方歌舞伎に移された大阪の物語ですから山村流にとっても縁のある作品です。
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